「遺言なんてまだ早い?」
自筆で遺言を書くことの意味

Shiho-shoshi

こんにちは、司法書士の小椋です。

先日、テレビのワイドショーで「遺言」が特集されていました。
有名な司会者の方が「自分はまだ死なない自信があるから、遺言書は書いてません!」と笑いながらおっしゃっていましたが、皆さんはいかがですか?

たしかに、「自分の死」を考えるのって、あまり気持ちのいいものではありませんよね。
でも最近では、高齢化社会の影響もあって、「最期」について話すことが、以前ほどタブーではなくなってきています。

とはいえ、「遺言」という言葉に、どこか重たい、あるいは不吉な印象を持っている方も多いかもしれません。
でも実は、遺言って“残された家族のため”のとても大事な準備なんです。


「自筆の遺言って、意味あるの?」

さて、今日のテーマはこちらです。

🔹 自筆の遺言は役に立たないって本当ですか?

結論から言うと、条件を満たしていれば、自筆でもちゃんと役に立ちます

ここで、実際に私がご相談を受けた事例をご紹介しましょう。


介護を続けた娘と、遺言書

石原京子さん(仮名)は、ご兄妹4人のうちの一人で、唯一の女性。
何年もお母様と同居し、介護をされてきました。

そのお母様が亡くなったあと、「母の名義になっている土地と家を、自分の名義に変えたい」とご相談に来られました。

お父様はすでに他界されていたので、法的な相続人は京子さんと、そのご兄弟あわせて4人です。

京子さんとしては、これまで自分が介護してきた事情もあって、母名義の不動産を自分が相続することに納得感がありました。
ただ、他のご兄妹との関係は今後も大切にしたい、揉め事にはしたくない、というお気持ちも強くお持ちでした。


救いとなった「自筆の遺言書」

ここでポイントになるのが、お母様が残していた自筆の遺言書です。

「私の財産をすべて長女の石原京子に譲ります。」

内容も形式も、法律上の要件を満たしており、名義変更に使える可能性が高いものでした。

ただ私は、すぐにその遺言書を使って手続きを進めることをおすすめしませんでした。
なぜなら、一番大事なのは「京子さんのお気持ち」だったからです。

遺言書を盾にして他の兄妹に相談もせず名義変更を進めるのは、法的には可能かもしれません。
でも、兄妹間の関係にヒビが入る可能性もあるからです。


「話し合い」という選択肢

そこで京子さんには、まず他のご兄妹に説明し、理解と合意を得るというステップをおすすめしました。

「お母さんの遺志として、私が相続することを望んでくれていた。けれど、皆さんのご意見も聞かせてください」と伝えるだけでも、印象は大きく違います。

もしご兄妹が納得し、実印付きの合意書(遺産分割協議書)の作成に協力してくれるなら、わざわざ家庭裁判所で遺言書の検認を受ける必要もないのです。

それでも話がまとまらなかった場合は、最後の手段として遺言書を使えばよいのです。


公正証書がベスト。でも自筆も「意味ある」んです

私はこれまで、遺言を書くなら「公正証書で」と強くおすすめしてきましたし、これからもそれは変わりません。

ただ、「いきなり公証役場に行くのはちょっと気が重い…」という方も少なくありません。
そんな方こそ、まずは自筆で書いてみるという選択肢もありだと思います。
2020年7月から始まった自筆証書遺言を法務局に保管してもらう制度を利用すれば、家庭裁判所の手続きも不要ですし、さらに安心です。

ちなみに私自身も、30代でマンションを購入したときに自筆で遺言を書きました。
当時はまだ司法書士でもなかった頃です。
今では、公正証書で作り直して保管していますが、自筆遺言から始めてよかったと思っています。


まずは「書いてみる」ことから

遺言は、「死の準備」ではなく、「家族の未来の安心」のための準備です。

そして、有効な形式であれば、自筆でもしっかり意味を持つ場合があります。

書くのが難しそう、不安…という方は、司法書士に気軽にご相談ください。
一歩踏み出すことで、きっと安心につながるはずです。


📌今日のポイント

  • 有効な自筆の遺言は、ちゃんと役に立つ
  • まずは「家族の話し合い」を優先する選択肢もある
  • 公正証書がベストだけど、自筆でスタートするのもアリ!

いかがでしたか?
「自筆の遺言って意味あるの?」という疑問に、少しでも参考になれば嬉しいです。

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