病院の経営状態を事前に知る方法
―医療法人の登記情報活用術

Shiho-shoshi

はじめに

最近、横浜市の眼科病院が突然閉院し、通院中の患者さんや手術予約をして費用を既に納めていた方々が困惑するという事件が報道されました。この病院は横浜以外にも複数の分院を展開していましたが、全て閉鎖される事態となりました。

病院前に掲示された通知文によれば、院長の死亡が直接の原因とされていますが、実は長年にわたり債務超過の状態が続いていたことが明らかになっています。

もし患者さんが事前にこの病院の経営状態を知ることができていたら、高額な手術費用を前納することはなかったかもしれません。

実は、病院の経営状態を知る方法が存在します。今回は司法書士の立場から、その具体的な方法をご紹介します。

医療法人社団とは

市中の病院の多くは、よほど規模の小さな医院でない限り、医療法人社団という組織形態で運営されています。

医療法人社団には、一般企業とは異なる特徴がありますが、その一つが「資産の総額の登記」という制度です。

「資産の総額」登記とは

医療法人社団には、毎年必ず行わなければならない登記として「資産の総額の登記」があります。

登記の目的

この登記制度には、以下のような重要な目的があります。

透明性の確保と信頼性向上
法人の財産状況を公開することで、取引先や関係者(金融機関、税務署、患者など)からの信頼を得ることができます。

法令遵守
医療法や組合等登記令で定められた義務であり、怠ると過料(20万円以下)が科される可能性があります。

非営利性の担保
医療法人は非営利性が求められるため、資産がどのように運用されているかを明確にする必要があります。

登記の内容と時期

資産の総額登記は、法人の財務状況を公的に明らかにし、透明性を確保するために、毎事業年度末から3ヶ月以内に実施することが義務付けられています。

これは、資本金のない医療法人の財産状況を示す「純資産」の額(資産 – 負債)を登記簿に反映させるものです。

実際の事例から学ぶ

冒頭でご紹介した眼科病院も、もちろん医療法人社団として「資産の総額」を登記していました。ニュース映像にも登記事項証明書が映し出されていましたが、そこには何年にもわたって次のような記載が繰り返されていたのです。

資産の総額 金0円(負債総額 金〇億〇万〇円)

この記載を見れば、長期間にわたり深刻な債務超過の状態にあったことが一目瞭然です。

あなたも確認できます

もし皆さんがこれから高額な手術を受ける予定があるなら、その病院の登記事項証明書を確認することで、事前にその病院の経営状態を知ることができます。

登記事項証明書の取得方法

  • 請求場所: 全国どこの法務局でも請求可能
  • 費用: 600円
  • 必要な情報: 医療法人の正確な名称、所在地

オンライン請求も可能ですので、わざわざ法務局に足を運ぶ必要もありません。オンラインならさらに手数料が安くなります。

今日のポイント

医療を受ける側にとって、病院の経営状態は決して「知らなくてもよい情報」ではありません。特に、高額な医療費を前納する場合や長期的な治療計画を立てる場合には、病院の財務の健全性を確認することは、ご自身の財産を守るための賢明な判断といえるでしょう。

登記情報は公開されている情報です。わずか600円で確認できるこの制度を、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。


ご相談は司法書士へ
登記事項証明書の取得方法や見方について不明な点がございましたら、お気軽に司法書士にご相談ください。

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