本人申請の落とし穴
司法書士が語る登記漏れのリスクとは?

Shiho-shoshi

相続による不動産の名義変更や住宅ローン返済に伴う抵当権抹消などの手続きをする際、「司法書士に頼まずに、自分で法務局に行って登記手続ができる」と耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

実際に、司法書士に依頼せずご自身で登記申請を行うことを「本人申請」といいます。費用の面でのメリットがあるため、近年ではこの方法を選ばれる方も増えています。

しかし、この本人申請には思わぬ落とし穴が潜んでいます。


本人申請のメリットと見落とされがちなリスク

本人申請の最大のメリットは、司法書士への報酬を節約できることです。登記にかかる登録免許税などの法定費用は避けられないものの、専門家への依頼費用が不要になるため、コスト面での魅力があります。

しかしその一方で、本人申請には専門知識の不足によるリスクがつきまといます。その中でも、私が長年の実務経験の中で特に問題視しているのが、登記漏れです。


登記漏れとは?――気づかぬうちに重大な問題へ

登記漏れとは、申請すべき不動産が複数あるにもかかわらず、その一部を見落としてしまうことで発生します。

たとえば、

  • 一軒家に付属する「私道」
  • 分譲マンションの「共有持分」や「敷地権」

こうした見落としやすい不動産の登記が漏れてしまうと、名義が亡くなった方のままになる、あるいは抵当権が残ったままになるといった問題が起こる可能性があります。

これらの問題は、不動産を売却したり新たに担保設定する際に大きな障害となり、場合によっては修正が困難、あるいは事実上不可能になるケースもあるのです。


法務局は教えてくれない?

「法務局がチェックしてくれるから大丈夫」と思われる方もいらっしゃいますが、これは大きな誤解です。

たしかに、書類に明らかな不備があれば法務局から補正の連絡が入ることもあります。しかし、法務局は申請された内容が正確かどうかを判断する機関ではありません

つまり、登記すべき不動産が漏れていたとしても、指摘されることなくそのまま登記が完了してしまうことがあるのです。実際に、こうしたケースを私は数多く見てきました。


複雑な相続や複数不動産の登記は要注意

特に次のようなケースでは、登記漏れのリスクがさらに高まります:

  • 相続する不動産が複数ある場合
  • 相続人が多数いる、または相続関係が複雑な場合
  • 過去の登記内容が不明確で確認が困難な場合

このような場面での本人申請は、非常に高いリスクを伴います。漏れがあった場合、後からの修復には多大な労力や時間、費用がかかることも少なくありません。


安心・確実な手続きを望むなら司法書士へ

本人申請には確かに費用面でのメリットがありますが、それ以上に将来的なリスクを回避するための安全策として、司法書士に依頼することを強くおすすめします。

とくに重要な不動産や相続に関する登記では、専門家のサポートを受けることで、安心・確実な手続きを実現できます。

「登記についてよく分からない」「自分でできるか不安」――そんな方は、ぜひ一度司法書士にご相談ください。後悔しない選択になるはずです。

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