通勤費の適正申告について
~最安ルート以外での申告は認められるのか~

Sharoshi

人事担当者の皆様、こんにちは。今回は、従業員からの相談でも多い「通勤費の申告」について、具体例を交えながら詳しく解説いたします。

【実例で学ぶ】通勤費申告の基本原則

ケース1:一般的な通勤ルート選択

従業員Aさんの場合

  • 自宅:新宿区
  • 勤務先:品川区の会社
  • 選択肢:
    • ①JR山手線利用:160円(所要時間15分)
    • ②東急線+JR利用:200円(所要時間20分)
    • ③タクシー利用:1,500円(所要時間12分)

正しい申告:①の160円で申告 理由:最安かつ合理的なルートが原則

ケース2:問題となる申告例

従業員Bさんの問題行動

  • 実際は①のルート(160円)で通勤
  • 申告は②のルート(200円)で申告
  • 理由:「差額40円×月20日=800円のお小遣い稼ぎ」

結果:不正受給として懲戒処分の対象となりました

【危険】不正申告の実際の事例とペナルティ

実際にあった不正事例

ケース:営業部Cさん(入社3年目)

  • 実際の通勤費:月額8,000円
  • 申告していた通勤費:月額12,000円
  • 不正期間:1年間
  • 不正受給総額:48,000円

発覚の経緯: 同僚から「Cさんが実際と違うルートで申告している」との内部通報

処分内容

  • 不正受給額48,000円の全額返還
  • 減給処分(月給の10%を3ヶ月間)
  • 人事評価の大幅減点
  • 社内での信頼失墜

より深刻な事例

ケース:管理職Dさん(課長職)

  • 実際:自家用車で通勤(ガソリン代月3,000円相当)
  • 申告:電車通勤として月額15,000円申告
  • 不正期間:2年間
  • 不正受給総額:360,000円

結果

  • 全額返還に加え、懲戒解雇処分
  • 管理職としての責任を重く見られた
  • 転職活動時の大きな障害となった

【注意】例外的に認められるケース

合理的理由がある場合の実例

ケース:従業員Eさん(身体障害者)

  • 最安ルート:地下鉄利用(階段の昇降が多い)月額8,000円
  • 申請ルート:バス利用(バリアフリー対応)月額10,000円
  • 事前に人事部へ相談し、医師の診断書を提出
  • 結果:例外として承認

ケース:従業員Fさん(業務上の事情)

  • 最安ルート:普通電車利用 月額6,000円(通勤時間1時間30分)
  • 申請ルート:特急利用 月額9,000円(通勤時間45分)
  • 理由:早朝会議が頻繁にあり、最安ルートでは間に合わない
  • 結果:部長承認により例外として認可

認められない自己都合の例

ケース:従業員Gさん(却下事例)

  • 最安ルート:普通電車 月額7,000円
  • 希望ルート:特急電車 月額10,000円
  • 理由:「座って通勤したい」「景色が良い」
  • 結果:却下。差額は自己負担で利用するよう指導

【実務】人事担当者が注意すべき具体的なポイント

1. 新入社員研修での具体的説明例

説明すべき内容

「通勤費は皆さんが実際に使っている最安ルートで申告してください。
例えば、自宅から会社まで3つのルートがあって、
A路線:300円、B路線:350円、C路線:400円だとします。
この場合、普段A路線を使っているなら300円、
B路線を使っているなら350円で申告してください。
ただし、A路線の300円が最安なのに、B路線の350円で申告するのは
不正受給となり、懲戒処分の対象になります。」

2. 定期的なチェック方法

月次チェック項目

  • 新規申告や変更申告の内容確認
  • 同一地域の従業員間での申告額比較
  • 異常に高額な申告の有無確認

年次チェック項目

  • 全従業員の申告ルートと実際の居住地の整合性確認
  • 交通系ICカードの利用履歴確認(任意協力)

3. 問題発覚時の対応フロー

Step1:事実確認

  • 本人からの聞き取り
  • 申告ルートと実際の利用状況の確認

Step2:不正額の算定

  • 過去の申告履歴の精査
  • 正規の申告額との差額計算

Step3:処分の検討

  • 不正の期間・金額・悪質性を総合判断
  • 就業規則に基づく適切な処分の決定

【予防策】社内規程整備のポイント

通勤費規程に盛り込むべき条項例

第○条(通勤費の申告)
1. 通勤費は、自宅から勤務地までの最短かつ最安のルートにより算定する
2. やむを得ない事情により別ルートを希望する場合は、事前に人事部の承認を得ること
3. 虚偽の申告により通勤費を不正に受給した場合は、懲戒処分の対象とする
4. 通勤ルートに変更が生じた場合は、速やかに届出を行うこと

従業員への周知方法

  • 入社時の説明会での詳細説明
  • 年1回の全社員向け通達
  • 社内ポータルサイトでの常時掲示
  • 住所変更時の個別リマインド

通勤費を軽く見てはいけません

通勤費の不正申告は、「少額だから」「バレないから」という軽い気持ちで始まることが多いですが、発覚時の処分は想像以上に重く、従業員の職業生活に深刻な影響を与えます。

企業として取り組むべき重要ポイント

  • 具体例を用いた分かりやすい説明で従業員の理解を深める
  • 明確な社内規程の整備と定期的な見直し
  • 例外的な取り扱いについては事前承認制度の徹底
  • 不正防止のための定期的なチェック体制の構築

人事担当者の皆様には、従業員が適正な申告を行えるよう、具体的で分かりやすい指導をお願いいたします。また、問題が発生した場合は、速やかに適切な対応を取ることで、職場全体の規律維持にお努めください。

ご不明な点がございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。


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